この一年間で何度も訪れた、山形県上山市内山集落(消滅集落)。秋。夏に訪れたときの、覆い繁っていた草木の圧倒的な新緑とは違い、草木は随分と落ち着き、紅葉の風景が目の前に広がっていた。冬眠前の熊が一番出没しやすい季節であり、非常に危険な場であることに変わりはない。しかし、その風変わりした自然の美しさに、何故か安堵感すら覚えた。日本も含めた世界情勢の不安な状況は変わらず、人々の気配が消滅し、エアポケット化したこの場において、様々な情景を重ね考えてしまう事がある。
古代ギリシャでは、異なる文明を理解し、その優れた点を取り入れていく事が、多民族をおさめていく知恵となった。又、当時のギリシャ人にとって、神話の神々は〝作りもの〟としてそこにあるのではなく、現に人々の前に立ち現れ、人々の運命を司る神そのものであり、人々の生き様の現身として共に生きる英雄達の姿であった。生きた現実がそこにはあった。そして、人々はそれを共有する為に言葉で語るのではなく、自ら演じることで語られてきたという。古代彫刻像を自身の身体を使い模した撮影は、今回で三度目となる。ヘルメス・アルテミシオンのゼウス・瀕死のガラティア人・サモトラケのニケ・クロイソスのクーロス。その人間美には僕自身、到底及ばない。それでも、自然に呑み込まれ誰もいなくなったこの場所でこの行為をもって、何度でも思いを寄せてみたいと思う。
Video
year: 2017
material: HD video, photo, paper, bell, radio
time: 17:19min
model: Hideki Ozuchi
camera: Takuro Goto
support: Yuko Nemoto
translation: Sakura Koretune
Photographing and landscape #3
撮影と風景 #3
HD video, photo, paper, bell, radio / 2017